いい立地、悪い立地の見極め方

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このホームページをご覧の方のなかには、飲食店を開業予定の方や、すでに開業されていて、2店舗目、3店舗目を出したいという方もいらっしゃるでしょう。

 

あなたは新しく飲食店をオープンする際、どんな基準で立地を選ぼうと考えていますか?

 

この質問を、いろいろな経営者の方に投げかけると、さまざまな答えが返ってきます。

 

駅前立地、大通り沿い、家賃の安い裏通り、競合店が少ない立地、などが答えとしてよくあげられます。なかには、自宅から近かった、風水で南西の方角がよかった、などという驚きの答えもあります。

 

この質問をするたびに、どこにお店を出すかという「立地」について、深く考えている人が少ないことを痛感します。

 

これは本当に恐ろしく、危ないことであり、まさにリスクそのものです。 


なぜなら、飲食店にとって「立地」は最も重要なものの一つだからです。

 

立地は、開業戦略における重要な要素であり、お店が繁盛するかどうかを大きく左右します。その立地を、明確な戦略と理由をもたずに決めてしまうことは、非常に危険な行為といわざるをえません。

 

「立地」選びを戦略的に行うということは、飲食店経営にくわしい人からすると、当たり前のことでしょう。しかし、この当たり前のことをきちんとやっているお店は本当に少ないのが実態です。

 

「いや、ちょっと待ってくれ。人通りの多い駅前立地なら、それでいいじゃないか。」 


こういう意見もあるかもしれません。

 

しかし、駅前だから、大通り沿いだから、人口が多いから、「いい立地」と言えるのでしょうか?

 

いいえ。それは違います。 

 

「いい立地」とは、「店舗とそのエリアの飲食需要の相性がいいところ」です。

 

駅前立地などその他の理由は、いい立地の諸条件のうちの1つに過ぎません。 

 

たとえ、駅前で通行者が多くても、人口が多くても、その場所に合った、お客様の需要がある場所でお店を出さなければ、集客は見込めず、いい立地とは言えないのです。

 

例えば、大学の近隣で、学生用のアパート・マンションが多い地域に、お客様が1回の来店で支払う金額(客単価)の高い居酒屋をオープンするとします。 

 

これは「相性がいい」とはいえません。なぜなら、一般的に学生はお金がないので、客単価の高い居酒屋へはなかなか行けないからです。この場所にオープンするなら、低価格帯の居酒屋、もしくは定食屋やカレー屋などのほうが、相性がいいでしょう。

 

つまり、「どんなお客様」の利用が多い地域なのか、「どんな飲食店」が発展している立地なのか、といった状況をきちんと見極める必要があります。

 

次に、よくある立地の種類とその特徴を表にまとめましたので、参考にしてください。 
(あくまで一般的特徴であるため、立地によっては表に記した内容と異なる場合もあります)

 

立地の種類 特徴
駅前 駅を使う徒歩客が多いため、アルコールが出やすい立地。また、人が集まる場所であるため、潜在的なマーケットは大きい。同時に家賃や保証金が高いので、出店時は慎重に。ターゲット層は幅広い場合が多い。
ビジネス街 ランチ、仕事帰りの飲食ニーズが見込めるため、サラリーマン向けの業態は成功しやすい。競合が多いので、いかに差別化するかがポイント。逆にファミリー客が少なく、日曜を休みにする店舗が多い。ターゲット層は男性サラリーマン、OLなど。
繁華街 休みに人が集まりやすい立地であるため、レジャー要素のある飲食ニーズが比較的高い。駅前同様、家賃や保証金が高いので、出店は慎重に行う。メインターゲットはカップルかファミリー。
商店街 メインターゲット層は地元住民か中高年となる。特に閉店したお店が目立つような古い商店街は人口密度や商圏人口が少ないことが多いために大きな売上は見込めない。逆に言えば競合が少ないため、成功するには、最初から地域一番店を狙う戦略がよい。
百貨店内 基本的に百貨店の集客力やターゲット層、百貨店内の場所によって変動する。百貨店客に合わせつつ、周りの店舗との差別化がポイントになる。
商業施設内 基本的に百貨店と同様。商業施設への来客者にターゲットを絞ることが最も低リスクと言える。
丘陵地、山沿い ほとんどが車で来店するため、駐車場の台数を確保。また、穴場的存在となることで成り立つ場合が多く、客数より客単価で勝負する。
海沿い 大都市や幹線道路上を除いて、海沿いに大手チェーンは出店してこないため、地域一番店を狙う戦略が良い。
国道・幹線道路沿い ほとんどが車で来店するため、駐車場の台数と駐車場への入りやすさが重要。また、店舗の視認性も重要なポイントになる。看板・ファサードの充実は必要条件となる。
裏通り 通行量が少ない通りであれば、隠れ家的存在として活かすか、独特の個性を持った店舗として成功を狙う。家賃は安いが、出店は慎重に。
高級住宅地 お昼の主婦層の高単価なランチ、夜の高単価な外食ニーズが見込める。業態によって異なるが、上品な小洒落たお店であれば、成功率は高まる。
雇用促進住宅・市営住宅 外食頻度がさほど低いわけではない。リーズナブルな価格帯や割引を活用して集客することが可能。ただし、高くてボリュームが少ないお店は難しい。

現実的には表にあったような立地の特徴が複合的に重なり合っている立地も多く存在します。そうなると、より立地を正確に把握することは難しくなってきます。

そんなときに最も正確に立地の特徴を把握する方法があります。

 

一般的によくとられる方法としては、調査会社から物件周辺のデータを買ったり、大手コンサルティング会社に調査を依頼したりすることなどがあります。しかし、これらは当然、高い費用がかかります。そんなことをしなくても、もっと簡単かつ確実に必要なデータを把握する方法があるのです。

 

それは、「現地に足を運ぶこと」です。

 

現地に行って周辺を散歩してみる、周辺の飲食店に実際に入ってみることが、最も正確に市場を調査できる方法なのです。 


なぜなら、散歩すれば、実際に目の前にある建物、お店、会社、そして通行者が見え、飲食店に入れば、実際の利用者の職業・年齢・性別その他がわかるのです。これ以上正確なデータはありません。当然ですよね。

 

しかし、実際に店舗をオープンする経営者が現地を入念に調査していないケースが非常に多いのが実情です。物件を見に行って、周辺を少し見てまわり、ちょっと周辺の競合店に寄る。このくらいの調査をして、現地にも数回しか行っていないのに、お店をオープンしてしまうことが多いのです。これでは、どんなお客様が、どんな飲食店に行くのか、勘に頼るしかありません。

確かに人口その他、数値データは重要です。しかし、現実のマーケット、現地を見なければわからないことがたくさんあります。 


これからお店をオープンする人は、ぜひ現地の調査をご自分でやってみてください。

繰り返しますが、いい立地は、自店とお客様のニーズの相性がいい場所のことです。そして、それらは目に見えない重要な要素が絡んでおり、机上のデータでは見極めることが難しいのです。

実際に現地で調査を行うことで、立地に関するリスクを低減することができます。